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東京高等裁判所 昭和33年(く)4号 決定 1958年8月16日

少年 H子(昭和一三・一一・二八生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告理由の要旨は原裁判所は少年H子が昭和三十二年十二月六日より同月十六日までの間に単独及びI子と共同で合計八回に亘り他人の財物を窃取し、かねて顔見知りの男子(年齢二〇歳位)が少年H子の行状につきその名誉を傷付ける様な虚偽の事実を語つたとの噂を聞き右男子に会つてその真偽を確かめ若し真実ならば同人を殺害しようと決意し昭和三十二年十一月二十日午後七時三十分頃世田谷区○○町×丁目△△番地附近で右男子を待合わせた際刃渡約十二糎の匕首類似の刃物を携帯して殺人の予備をしたとの事実を認定してH子を中等少年院に送致する旨の決定をしたが、右本人の申立は遊び友達から離れたいため虚偽の事実を述べたもので原決定には事実の誤認があるから、本件抗告に及ぶと云うにある。

しかし本件記録によれば原決定が認めた事実は少年H子の司法警察員に対する供述調書同人の原審審判期日における陳述I子の司法警察員に対する供述調書(写)窃盗被害者武安彦、高橋保重、渡辺イク、小作一雄、藤岡文子、関屋美彦、中村輝平、中村源二名義の各被害届、加藤克彦、安井紳一郎の司法警察員に対する各供述調書、押収にかかる匕首類似の刃物(当庁昭和三三年押第六〇号の一)によつて証明が十分であつて、抗告人の主張はこれを容れる余地がないことは明らかである。その他本件記録並びに少年調査記録を調査するも原決定の処分は不当なものとは解せられないから本件抗告は理由がない。

よつて本件抗告を棄却することとし少年法第三十三条により主文のとおり決定する。

(裁判長判事 坂井改造 判事 山本長次 判事 荒川省三)

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